「今の会社を辞めて、少し休んでから次を探そう」「辞めてから次が決まるまで、どこまで国が支えてくれるのか」——そんなところで止まっていませんか。結論から言うと、失業保険は、辞めた翌月から給料の代わりに振り込まれるお金ではありません。20代の自己都合退職ならほとんどの場合90日分で、最初の振込は退職から2か月近く先です。
この記事では、ハローワークと厚生労働省の公表情報だけを使って、いつ・いくら・どんな順で受け取れるかを期限つきで整理します。読み終わるころには、自分がいくらをいつから受け取れるかが見えてきます。
失業保険は「辞めたらすぐ入るお金」ではない
正式名称は雇用保険の基本手当といいます。「失業保険」「失業手当」は通称です。
多くの人がイメージとずれるのは、次の3点です。
①辞めただけではもらえない
基本手当は「失業の状態にある人」に支給されます。ハローワークの定義では、失業とは「就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態」です。したがって「しばらく休養しようと思っている」段階では受け取れません。病気やけがですぐに就職できない場合、妊娠・出産・育児ですぐに就職できない場合も同じです。
②在籍期間が短いと、そもそも対象外
ここが20代でいちばん引っかかるポイントです。次の章で詳しく説明します。
③自己都合だと、待たされる
7日間の待期に加えて、自己都合退職には給付制限があります。この期間は1円も振り込まれません。
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」・「雇用保険の具体的な手続き」/2026年9月12日確認
まず確認:20代がつまずくのは「12か月の壁」
自己都合で辞めた場合、基本手当を受け取るには離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あることが必要です。
被保険者期間の数え方には条件があります。離職日から1か月ごとに区切った期間のうち、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある月を1か月と数えます。
つまり、新卒で入社して1年経たずに自己都合で辞めた人は、原則として失業保険を受け取れません。
これは第二新卒・短期離職を考えている人にとって決定的な条件です。「とりあえず辞めて、失業保険をもらいながら探す」という計画は、在籍1年未満だと最初から成立しません。
ただし例外があります。特定受給資格者(倒産・解雇など)や特定理由離職者(契約更新されなかった場合など)に該当すれば、離職の日以前1年間に被保険者期間が6か月以上あれば受給できます。自分がどちらに当たるかの判定はハローワークが行います。会社が「自己都合」として離職票を出していても、実態が退職勧奨であれば異議を申し立てられます。心当たりがあるなら、離職票を鵜呑みにせず窓口で相談してください。
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」/2026年9月12日確認
在籍が短い状態での転職そのものについては、短期離職からの転職と第二新卒の転職で扱っています。
いくらもらえるか(月給別の目安)
1日あたりの支給額を基本手当日額といいます。計算はこうです。
まず、離職前6か月に毎月きまって支払われた賃金の合計を180で割ります。これが賃金日額です。賞与(ボーナス)は含みません。ここが誤解されやすいところで、年収ベースで考えると実際より多く見積もることになります。
そして賃金日額に給付率(50〜80%)を掛けたものが基本手当日額です。賃金が低い人ほど給付率は高くなります。
2026年8月1日の改定後、上限は次のとおりです。
| 離職時の年齢 | 基本手当日額の上限 |
|---|---|
| 30歳未満 | 7,450円 |
| 30歳以上45歳未満 | 8,270円 |
| 45歳以上60歳未満 | 9,110円 |
| 60歳以上65歳未満 | 7,830円 |
下限は全年齢共通で2,562円です。
これを月給に置き換えると、こうなります。所定給付日数90日(20代の自己都合の大半)で計算した目安です。
| 月給(賞与を除く) | 賃金日額 | 基本手当日額 | 90日分の合計 |
|---|---|---|---|
| 18万円 | 6,000円 | 4,683円 | 約42万円 |
| 20万円 | 6,666円 | 5,036円 | 約45万円 |
| 22万円 | 7,333円 | 5,357円 | 約48万円 |
| 25万円 | 8,333円 | 5,775円 | 約52万円 |
| 30万円 | 10,000円 | 6,307円 | 約57万円 |
厚生労働省が公表している計算式(令和8年8月1日〜)に当てはめて算出した目安です。実際の額は賃金の締め方などで変わるため、正確な金額はハローワークで確認してください。
表を見て気づいてほしいのは、月給が上がるほど給付率が下がることです。月給18万円なら賃金日額の78%が戻りますが、月給30万円だと63%です。もともと「生活を丸ごと支える」設計ではなく、下支えの制度だということが数字に表れています。
何日分もらえるか
自己都合退職(一般の離職者)の所定給付日数は、年齢に関係なく被保険者期間だけで決まります。
| 被保険者であった期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
新卒から働き続けている20代なら、ほぼ全員が90日です。5年勤めても8年勤めても90日で変わりません。
一方、倒産・解雇などの特定受給資格者は年齢と被保険者期間で細かく分かれ、30歳未満なら被保険者期間1年以上5年未満で90日、5年以上10年未満で120日、10年以上20年未満で180日となります。同じ会社を同じ年数勤めても、辞め方によって倍の差がつくことがあります。
なお、受け取れる期間は離職日の翌日から原則1年間です。この1年を過ぎると、90日分を使い切っていなくても受け取れなくなります。手続きを後回しにすると損をする仕組みです。
いつからもらえるか
自己都合の場合、退職日から初回振込までの流れはこうなります。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ①離職 | 離職票が届くのを待つ。会社の届出とハローワークの交付を経るため、退職日に受け取れるものではない |
| ②受給資格の決定 | ハローワークで求職の申込みをし、離職票を提出する。この日が起点になる |
| ③待期(7日) | 求職申込み後、失業の状態にある7日間。ここは支給されない |
| ④給付制限(原則1か月) | 自己都合の場合に発生。ここも支給されない |
| ⑤失業の認定 | 原則4週間に1度。求職活動の実績を申告する |
| ⑥振込 | 認定を行った日から通常5営業日で口座に入る |
受給資格の決定から数えても、初回の振込まで1か月半前後かかります。これに離職票が届くまでの期間が加わるので、退職から2か月近く見ておくのが現実的です。(離職票が手元に届くまでの日数は会社によって違うため、ここだけは目安です。届かない場合はハローワークに相談できます)
受給資格の決定に必要な持ち物は、離職票(−1、−2)、マイナンバー確認書類、身元確認書類、写真2枚(マイナンバーカードの提示で省略可)、本人名義の預金通帳またはキャッシュカードです。手続きは平日8時30分〜17時15分ですが、求職申込みに時間がかかるため16時前の来所が推奨されています。最寄りの窓口はハローワーク等所在地情報から探せます。
つまり、貯金が1か月分しかない状態で辞めると、失業保険が入る前に尽きます。これは制度の欠陥ではなく、そういう設計です。
出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」/2026年9月12日確認
有給を使って退職日をずらす方法は有給消化と退職日の決め方に、退職の手続き全体は退職の流れにまとめています。
2025年4月から、給付制限は1か月に短縮されている
ここは情報が古いまま出回っている部分なので、はっきり書きます。
退職日が2025年(令和7年)4月1日以降なら、自己都合退職の給付制限は原則1か月です。2025年3月31日以前の退職は原則2か月でした。
ただし例外が2つあります。
- 退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けている場合は3か月
- 自分の責任による重大な理由で解雇された場合(重責解雇)も3か月
さらに2025年4月から、教育訓練等を受けると給付制限そのものが解除されるしくみができました。対象は、教育訓練給付金の対象となる教育訓練、公共職業訓練等、短期訓練受講費の対象となる教育訓練などです。2025年4月1日以降に受講を開始したものに限られ、離職日前1年以内に受けた場合(途中退校は不可)か、離職日以後に受けている場合が対象になります。該当しそうなら、ハローワークに申し出てください。申し出には期限があります。
注意点をひとつ。ハローワークの一般向け解説ページの一部には、改正前の「2か月」という記述が残っています(2026年8月時点)。検索して出てきた情報が食い違っていたら、公表日の新しいほうを見るか、窓口で確認するのが確実です。
出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」(LL070228保01)注1/2026年9月12日確認
受給が始まってからやること
振込は自動では続きません。4週間に1度の認定日にハローワークへ行き、求職活動の実績を申告する必要があります。
必要な求職活動の回数は次のとおりです。
- 通常の認定対象期間:原則2回以上(初回の認定日にかかる期間は1回)
- 給付制限期間とその直後の認定対象期間をあわせた期間:原則2回以上(給付制限が3か月の場合は原則3回以上)
何が実績として認められるかは決まっています。
| 認められる | 認められない |
|---|---|
| 求人への応募 | 求人情報を見ただけ(ハローワーク・新聞・インターネット) |
| ハローワークの職業相談・職業紹介、各種講習やセミナーの受講 | 単に知人へ紹介を依頼しただけ |
| 許可・届出のある民間機関(民間職業紹介機関、労働者派遣機関)の職業相談・職業紹介、セミナー受講 | ― |
| 公的機関等が実施する職業相談、各種講習・セミナー、個別相談ができる企業説明会等への参加 | ― |
| 再就職に資する国家試験・検定等の受験 | ― |
転職エージェントは「許可・届出のある民間職業紹介機関」に当たるため、そこで職業相談を受けることも実績になります。ただし機関によって扱いが違う可能性があるので、認定前にハローワークで確認してください。
アルバイトについても書いておきます。受給中に働くこと自体は禁止されていませんが、必ず失業認定申告書で申告してください。収入があると基本手当が減額または不支給になる場合があります。申告しなかった場合は不正受給です。不正受給が発覚すると、それ以後の支給がすべて停止されるうえ、返還を命じられた金額とは別に、不正に受給した額の2倍に相当する額以下の納付を命じられます(合計で最大3倍)。割に合いません。
出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」・「基本手当について」/2026年9月12日確認
早く決めたほうが得になる「再就職手当」
ここはあまり知られていませんが、金額のインパクトが大きい制度です。
所定給付日数を3分の1以上残して安定した職業に就くと、残日数分の一部がまとめて支給されます。
| 残した日数 | 給付率 | 所定給付日数90日の場合 |
|---|---|---|
| 所定給付日数の3分の2以上 | 支給残日数の70% | 60日以上残して就職 |
| 所定給付日数の3分の1以上 | 支給残日数の60% | 30日以上残して就職 |
具体的に計算してみます。月給25万円で基本手当日額5,775円、所定給付日数90日の人が、給付制限期間中に就職を決めたとします。残日数は90日なので給付率70%。
5,775円 × 90日 × 70% = 363,825円
一括で36万円です。しかもこの時点で新しい給料が始まっています。90日かけて52万円を受け取るのと比べると、早く決めるほうが手取りの総額は大きくなります。
主な要件は次の7つです。
- 7日間の待期満了後に就職したこと
- 就職日の前日までの失業の認定を受けたうえで、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
- 前の会社に戻ったのではないこと(資本・資金・人事・取引面で密接な関係のある会社も不可)
- 1年を超えて勤務することが確実であること
- 原則として雇用保険の被保険者になること
- 過去3年以内に再就職手当・常用就職支度手当を受けていないこと
- 受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた会社ではないこと
最後の要件は重要です。在職中に転職先を決めてから辞めた場合、再就職手当の対象にはなりません(そもそも失業していないので基本手当も出ません)。再就職手当は「辞めてから探す人」のための制度です。
そして、給付制限がある人には8つ目の要件が加わります。待期満了後1か月の期間内に就職する場合は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であることが必要です。この1か月を過ぎれば就職経路は問われません。裏を返せば、辞めた直後の1か月に自力で応募して決めると、条件を満たさなくなる可能性があります。早期に決める見込みがあるなら、この点は最初に窓口で確認しておいてください。
申請は就職した日の翌日から1か月以内です。基本手当日額には上限があり、60歳未満は6,745円です(2027年7月31日までの額)。
結論:失業保険は「保険」であって「予算」ではない
20代・自己都合・月給25万円のケースです。
- 受け取れるのは90日分・約52万円
- 初回の振込は退職から2か月近く先
- 在籍が1年未満なら、そもそも0円
この条件で「失業保険があるから大丈夫」と言えるかどうかは、貯金額次第です。制度を知ったうえで辞めるのと、知らずに辞めるのとでは、着地がまるで違います。
そして正直に書くと、金額の面では在職中に次を決めるほうが有利です。失業期間がなければ収入は途切れませんし、国民健康保険と国民年金への切り替えも発生しません。基本手当も再就職手当も受け取れませんが、その代わり給料が続きます。
とはいえ、今の職場が心身に影響を及ぼしているなら話は別です。その場合は「辞めてから探す」で構いません。ただしそのときは、辞める前に離職票が届くまでの生活費を確保しておくこと、そして在籍が1年に届いているかを先に確認すること。この2つだけは押さえてください。
在職中に動く方法は在職中の転職活動に、辞めたい気持ちの整理は仕事を辞めたい20代にまとめています。
辞めてから探す場合も、在職中に動く場合も、職業紹介事業者を使うと選択肢が増えます。再就職手当の「待期満了後1か月以内は紹介による就職が必要」という条件をクリアできますし、求職活動の実績としても認められます(認定前にハローワークで確認してください)。
職業紹介事業者についてはハタラクティブの評判、マイナビジョブ20’sの評判、第二新卒エージェントneoの評判で解説しています。
いずれも無料で使えますが、必ず使わなければいけないものではありません。ハローワークの職業相談も同じく求職活動の実績として認められますし、地域の求人はそちらのほうが多い場合もあります。ハローワークには20代向けの窓口があり、書類添削や模擬面接まで無料で受けられます(→ハローワークは20代に使えるか)。自分に合うものを選んでください。
健康保険と年金の切り替えも、失業保険と同時に発生します。退職後の健康保険と年金の手続きに、任意継続・国保・扶養の選び方と、国民年金を未納にしないための免除申請をまとめました。
なお、失業保険を受け取れるかどうかは、勤めていた会社で雇用保険に入っていたかで決まります。入社時に渡される労働条件通知書の「その他」欄に、雇用保険の適用が書かれています。内定後の労働条件通知書|どこを見るかで確認する場所をまとめました。
離職票が届かないと手続きが始まりません。書類の受け取り方と、届かないときの相談先は退職時にもらう書類と返すものにまとめています。
金額はすべて目安です。自己都合か会社都合かの判定を含め、最終的な金額と条件はハローワークが決めます。手続きの前に窓口で確認してください。
まとめ
- 失業保険(雇用保険の基本手当)は、自己都合なら離職前2年間に被保険者期間12か月以上が必要。在籍1年未満だと原則もらえない
- 20代の自己都合はほぼ全員90日分。基本手当日額の上限は30歳未満で7,450円(2026年8月1日改定)
- 金額は賃金日額の50〜80%。賞与は計算に入らない。月給が高いほど給付率は下がる
- 初回振込は待期7日+給付制限1か月を経てから。退職から2か月近くかかる
- 給付制限は2025年4月1日以降の退職なら原則1か月(5年内に2回以上の自己都合退職は3か月)。教育訓練を受けると解除される場合がある
- 受給中は4週ごとの認定日と求職活動実績が必要。アルバイトは必ず申告する(不正受給は最大3倍返還)
- 3分の1以上残して就職すると再就職手当。早く決めるほど手取りの総額は大きくなる
- 判定と金額を決めるのはハローワーク。辞める前に一度、窓口で確認しておくのが確実です


