有給消化と退職日の決め方|会社は拒否できない・使い切る手順

花と手帳とスニーカーが並んだ机。休みの予定を立てる場面 退職・円満退社

「退職するとき、有給って全部使えるの?」「引き継ぎがあるのに休んでいいのかな」——そんなところで迷っていませんか。結論から言うと、退職時の有給消化を、会社は拒否できません。これは気持ちの問題ではなく、制度上そうなっています。

この記事では、拒否できない理由を根拠つきで示したうえで、有給を使い切る退職日の逆算手順・切り出すときの言い方・断られたときの返し方までまとめます。読み終わるころには、退職日をいつにするかが決められます。

結論:退職時の有給消化は、会社に拒否できない

会社には「時季変更権」という権利があります。従業員が指定した日に休まれると事業の正常な運営が妨げられる場合に、別の日に変更してもらう権利です。

ポイントは、これが「変更」の権利であって「拒否」の権利ではないことです。別の日に与えることが前提になっています。

ここで退職の場合を考えてください。退職日を過ぎたら、その人の有給は消滅します。つまり変更先の日が存在しません。だから時季変更権を使えないのです。

退職した場合、退職日をもって年次有給休暇の権利は消滅します。退職間近に残っている年休をすべて使い切って辞めたいと申請された場合も、退職で年休権が消滅することから、会社は時季変更権を行使できず、取得を認めるほかありません

出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」年次有給休暇/2026年9月12日確認

引き継ぎなどが必要なとき、会社から退職日を遅らせる打診がされることもあります。ただしこれに応じるかどうかは、労働者に委ねられています。「引き継ぎがあるから退職日を1か月延ばしてほしい」と言われても、決めるのはあなたです。

そもそも有給に会社の承認は要りません
有給は「申請して許可をもらうもの」だと思われがちですが、労働者が日を指定した時点で成立します。使用者の承認は必要ではない、という最高裁の判例(白石営林署事件 昭和48年3月2日)があります。

「業務が忙しいから」は理由になりません
時季変更権が認められるのは「事業の正常な運営を妨げる」場合で、年末などの特に繁忙な時季や、同じ日に多数の従業員の希望が重なった場合などを指します。単に業務多忙という理由では認められません。

有給を取ったことを理由に不利益な扱いをするのも禁止されています(労働基準法附則136条)。

そもそも有給は何日あるのか

自分の残日数を把握していない人は意外と多いので、先に確認しておきましょう。

有給は、雇入れの日から6か月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤すると10日発生します。その後は1年ごとに加算され、上限は20日です。

継続勤務年数付与日数
6か月10日
1年6か月11日
2年6か月12日
3年6か月14日
4年6か月16日
5年6か月18日
6年6か月以上20日

(労働基準法39条1項・2項。週の所定労働日数が少ない人は日数が変わります)

繰り越しがあるので、2年ぶんある可能性があります
有給の時効は2年です(労働基準法115条)。前年に使い切れなかったぶんは翌年に繰り越されるので、新卒3年目なら20日以上残っていることも珍しくありません。就業規則で「繰り越さない」と定めていても、権利そのものは消滅しません。

残日数は給与明細や勤怠システムで確認できます。分からなければ、人事や総務に聞いて構いません。

データで見る「みんな使えていない」現実

有給が取りにくい空気は、あなたの会社だけの話ではありません。

年次有給休暇の付与日数と取得日数(労働者1人平均)
取得率66.9%。過去最高でも、まだ3分の1は使われずに消えている。
付与された日数18.1日
実際に取得した日数12.1日
出典:厚生労働省「令和7年(2025年)就労条件総合調査」/2026年9月12日確認(令和6年1年間に企業が付与した日数。繰越日数を除く/常用労働者30人以上の民営企業3,820社の有効回答)。取得日数12.1日・取得率66.9%はいずれも昭和59年以降で最も高い水準。産業別では宿泊業・飲食サービス業が50.7%と最も低い。

取得率は上がってきていますが、それでも平均で6日ぶん(18.1日-12.1日)が毎年消えています。在職中に取りにくかったぶん、退職時にまとめて使うのは自然なことです。

なお2019年からは、10日以上有給が付与される人について、会社が年5日は必ず取得させる義務を負っています(労働基準法39条7項)。違反した会社には30万円以下の罰金が定められています。「有給を取らせない会社」は、そもそも法律に違反している可能性があります。

有給を使い切る退職日の決め方【4ステップ】

ここが実務の中心です。最終出社日と退職日を分けて考えるのがコツになります。

有給は在籍している日にしか使えません。つまり、最終出社日のあとに有給消化の期間を置き、その最終日を退職日にするのが基本の形です。

ステップ決めること考え方
1残っている有給日数給与明細・勤怠システムで確認。繰り越しぶんも含める
2引き継ぎに必要な日数後任への説明と資料作成にかかる日数を見積もる
3最終出社日引き継ぎが終わる日。挨拶もここまでに済ませる
4退職日最終出社日の翌営業日から残日数ぶんを有給に充て、その最終日

具体例で見てみます
有給が15日残っていて、引き継ぎに3週間かかりそうな場合。

  • 上司に伝えるのが9月1日
  • 引き継ぎ期間:9月2日〜9月22日
  • 最終出社日:9月22日
  • 有給消化:9月24日〜10月14日(営業日で15日ぶん)
  • 退職日:10月14日

この形なら、有給を1日も捨てずに済みます。退職届に書くのは「退職日」のほうなので、10月14日と書きます。

逆算するときの注意点
土日祝は有給を使う必要がありません(もともと休みのため)。営業日で数えるようにしてください。15日ぶんの有給なら、実際には3週間ほどのカレンダー期間が必要になります。

また、就業規則で「退職は1〜2か月前までに申し出る」と定めている会社が多いので、有給消化の期間も含めて逆算します。申し出が遅れると、有給を使う時間そのものが足りなくなります。

在職中に転職活動を進めている人は、面接の日程調整と有給消化のスケジュールが重なります。進め方は在職中の転職活動のコツにまとめています。

退職日を月末にするかどうかで変わること

細かい話ですが、知らないと損をする場合があります。

健康保険や厚生年金の資格を失う日(資格喪失日)は、退職日の翌日です。

出典:日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」/2026年8月22日確認

  • 9月30日(月末)に退職 → 資格喪失日は10月1日。9月分は会社の社会保険に入っていた扱い
  • 9月29日に退職 → 資格喪失日は9月30日。9月分は会社の社会保険から外れ、自分で国民健康保険・国民年金に入る

「月末の前日に辞めたほうが保険料が安い」と言われることがありますが、会社の保険から外れたぶんは自分で国民健康保険と国民年金に入るので、単純に得とは限りません。次の会社への入社日がいつかによっても変わります。

有給を使い切ることを優先しつつ、退職日が月末付近になりそうなら、会社の担当者に「この退職日だと社会保険はどうなりますか」と一度確認しておくと安心です。退職後の手続きは退職の流れにまとめています。

有給消化を切り出すときの伝え方

権利ではあっても、言い方で相手の反応は変わります。対立する必要はありません。

コツは、引き継ぎの計画とセットで出すことです。「休みたい」ではなく「ここまでで引き継ぎを終えるので、残りを消化させてください」と伝えると、話が具体的になります。

例文:退職の意思を伝えるときに一緒に出す場合

退職日は10月14日で考えております。有給が15日残っていますので、引き継ぎを9月22日までに終えたうえで、9月24日から消化させていただきたいです。引き継ぎの計画は別途まとめてお持ちします。

例文:あとから切り出す場合

有給の残日数を確認したところ15日ありました。引き継ぎに支障が出ないよう進めたいので、最終出社日を9月22日、退職日を10月14日とさせていただけないでしょうか。

やらないほうがいいこと
「有給は権利ですから」と最初から法律を持ち出すのは、必要になるまで取っておきましょう。最初から構えると、相手も構えます。まずは普通に相談する。断られてから根拠を出せば十分です。

退職そのものの切り出し方は退職の切り出し方で解説しています。

こう言われたら、どう返すか

言われること考え方と返し方
「引き継ぎがあるから無理」引き継ぎの完了時期を示して交渉する。「9月22日までに完了させます。それ以降で消化させてください」
「忙しいから今は認められない」時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる」場合に限られ、単に業務多忙では認められない。ただし言い返す前に、まず引き継ぎ計画を示すほうが早い
「退職日を1か月延ばしてほしい」応じるかどうかは自分で決めてよい(厚労省の見解)。次の入社日が決まっているなら、その事情を伝えて断って問題ない
「うちは有給の消化は認めていない」制度として認めない選択肢はない。就業規則を確認し、それでも変わらなければ社外の窓口へ
「代わりに買い取るから」買取は法律上の権利ではなく、会社の制度によります。金額も会社が決めるので、日数ぶんの給与と一致するとは限りません。急ぐ理由がなければ消化を選ぶほうが確実です

それでも認められないときは、社外に相談できます
厚生労働省の「総合労働相談コーナー」は、各都道府県労働局や労働基準監督署のなかに設置されており、労働問題全般について専門の相談員が対応します。予約不要・無料です(土日祝・年末年始は閉庁)。

有給を取らせない、退職を認めないといった対応が続く会社は、他にも問題を抱えていることが多いものです。ブラック企業の見分け方も参考にしてください。

有給が残ったまま辞めそうなとき

どうしても日数が足りない、あるいは次の入社日が迫っている場合の選択肢です。

半日・時間単位で使えないか確認する

就業規則に定めがあれば半日単位で取得できます。時間単位は労使協定があれば年5日の範囲内で可能です。細切れに使えると、引き継ぎと並行しやすくなります。

入社日を相談する

次の会社が決まっている場合、入社日を数日〜1週間ずらせないか聞いてみる価値はあります。転職エージェント経由なら、この交渉は担当者が代わりにやってくれます。言いにくい条件交渉を任せられるのは、実務上かなり大きい部分です。エージェントの仕組みは転職エージェントと転職サイトの違いで解説しています。

買い取ってもらえるか聞く

前述のとおり権利ではありませんが、制度がある会社もあります。ダメ元で確認する程度に考えてください。

それでも残ったら、割り切る

有給を使い切ることより、次の仕事を良い状態で始めるほうが大事な場面もあります。数日ぶんのために転職先の入社日を後ろにずらすのが本当に得か、天秤にかけて決めてください。

よくある質問

Q. 有給消化中に次の会社で働き始めてもいいですか?
A. 二重就労になるため、就業規則で禁止されている場合があります。在籍中は前の会社の従業員なので、社会保険や雇用保険の手続きも重なります。次の会社の入社日は、退職日の翌日以降にするのが基本です。

Q. 引き継ぎが終わらないまま有給に入ってもいいですか?
A. 制度上は可能ですが、おすすめしません。連絡が来て結局休めない、という事態になりがちです。引き継ぎ資料を残しておくと、有給中の問い合わせがぐっと減ります。

Q. 有給消化中でも給料は出ますか?
A. 出ます。有給は「有給休暇」なので、通常どおりの賃金が支払われます(支払い方法は就業規則の定めによります)。

Q. 退職を伝える前に有給の残日数を聞いたら、怪しまれませんか?
A. 給与明細や勤怠システムで確認できることが多いので、まずは自分で調べましょう。人事に聞く場合も、有給の残数確認自体は普通の問い合わせです。

Q. 有給を使い切ってから退職日を迎えるまで、会社に行かなくていいですか?
A. 行く必要はありません。ただし備品の返却や書類の受け取りが残っている場合は、最終出社日までに済ませるか、郵送で対応できるか確認しておきましょう。退職の流れにチェックリストがあります。

Q. パートやアルバイトでも有給はありますか?
A. あります。週の所定労働日数に応じて日数は変わりますが、条件を満たせば付与されます。雇用形態による区別はありません。

退職後に失業保険を受け取るつもりなら、失業保険は20代でいくら?で条件と金額を先に確認しておくと計画が立てやすくなります。

退職日が決まったら、健康保険と年金の切り替えも準備が要ります。手順は退職後の健康保険と年金の手続きにまとめました。

退職日を過ぎたあとに受け取る書類・返す物のリストは退職時にもらう書類と返すものにあります。

まとめ

退職時の有給消化を、会社は拒否できません。退職日を過ぎれば有給は消滅するため、会社は時季変更権を使えない——これが理由です。「退職日を遅らせてほしい」と言われても、応じるかどうかを決めるのはあなたです。

進め方は、最終出社日と退職日を分けて考えること。残日数を確認し、引き継ぎが終わる日を最終出社日にして、そこから営業日で残日数ぶんを足した日を退職日にします。就業規則の申し出時期があるので、有給の期間も含めて早めに逆算してください。

切り出すときは、引き継ぎの計画とセットで伝える。それで断られたら、根拠を示す。それでも動かなければ、総合労働相談コーナーに相談する。この順番で十分です。

有給は、これまで働いてきたぶんの権利です。遠慮して捨てる必要はありません。

辞めたあとの手続きは退職の流れ、次の一歩は転職活動の進め方で解説しています。入社日の調整を任せたい人は第二新卒エージェントneoの評判なども参考にしてください。

引き継ぎそのものの進め方は退職の引き継ぎにあります。まだ辞めるか迷っている段階なら、先に仕事を辞めたい20代を読んでみてください。

タイトルとURLをコピーしました