「何をいつまでにやればいいのか」「お金がなくても払わないといけないのか」——そんな不安のまま、止まっていませんか。結論から言うと、健康保険は3つの選択肢があり、期限が違います。任意継続は退職日の翌日から20日以内、国民健康保険は14日以内で、過ぎると選べたはずの選択肢が消えます。
この記事では、協会けんぽ・日本年金機構・厚生労働省の公表情報だけを使って、健康保険の3つの選択肢と、国民年金の免除の手続きを整理します。読み終わるころには、いつまでに何をすればいいかが決まります。
保険証を返したら、翌日から自分で手続きする
会社の健康保険証が使えるのは退職日までです。翌日からは、自分で加入先を決めて手続きします。
期限をまとめると、こうなります。
| 何を | 期限 | どこで |
|---|---|---|
| 健康保険(任意継続) | 退職日の翌日から20日以内 | お住まいの都道府県の協会けんぽ支部 |
| 健康保険(国民健康保険) | 14日以内 | お住まいの市区町村の国民健康保険担当課 |
| 健康保険(家族の扶養) | 家族の勤務先に確認 | 家族の勤務先 |
| 国民年金 | すみやかに | 年金事務所/市区町村の国民年金窓口/マイナポータル |
いちばん短いのは任意継続の20日です。しかも郵送の場合は20日以内に必着である必要があります(20日目が土日・祝日なら翌営業日)。退職後の疲れが出る時期と重なるので、ここだけは先に日付をカレンダーに入れておいてください。
なお、次の会社に入社日から加入するなら、これらの手続きは発生しません。空白期間があるかどうかが分かれ目です。
出典:協会けんぽ「任意継続」、厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」/2026年9月12日確認
健康保険は3択
退職後の健康保険の選択肢は、次の3つです。
| 任意継続 | 国民健康保険 | 家族の扶養 | |
|---|---|---|---|
| 手続き先 | 都道府県の協会けんぽ支部 | 市区町村の国保担当課 | 家族の勤務先 |
| 期限 | 退職日の翌日から20日以内 | 14日以内 | 家族の勤務先に確認 |
| 加入条件 | 退職日までに被保険者期間が継続2か月以上 | 市区町村に確認 | 扶養の条件を満たすこと |
| 保険料 | 退職前の2倍(上限あり) | 世帯の人数と前年の所得で決まる | 負担なし |
保険料だけで見れば、家族の扶養に入れるなら断然それが有利です。負担がゼロになります。ただし条件があるので、後の章で詳しく見ます。
任意継続と国民健康保険のどちらが安いかは、断定できません。前年の所得、住んでいる自治体、扶養する家族の有無で逆転します。両方を試算して比べるのが唯一の正解です。任意継続の額は協会けんぽ支部、国保の額は市区町村の窓口で確認できます。
出典:協会けんぽ「任意継続」/2026年9月12日確認
任意継続は「在職中の2倍」。ただし上限がある
任意継続は、退職後も会社で入っていた健康保険にそのまま2年間残る制度です。給付の内容は在職中と同じで、窓口負担の割合も変わりません。
保険料は在職中のちょうど2倍になります。在職中は会社が半分負担していたので、その分も自分で払うことになるためです。
計算式はこうです。
退職時の標準報酬月額 × お住まいの都道府県別保険料率(子ども・子育て支援金率を含む)
ここで上限が効いてきます。退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた場合は、32万円で計算されます。
つまり、もともとの給与が高かった人ほど、任意継続は割安になります。逆に言えば、20代で標準報酬月額が32万円に届いていない人は上限の恩恵がなく、素直に2倍を払うことになります。
注意点を3つ挙げます。
①保険料を1回でも滞納すると、その時点で資格を失います。任意継続が終わる事由に、保険料を納付期限までに納付しなかったときが含まれています。毎月10日が期限です。うっかりでも戻れません。
②任意継続中に発症した病気・ケガの傷病手当金は出ません。在職中から継続して受け取っている場合だけ引き続き申請できます。「働けなくなったときの保障が在職中と同じ」ではない点は押さえておいてください。
③領収証書は確定申告で必要になります。再発行はできません。捨てないでください。
一方でメリットもあります。6か月分または12か月分をまとめて前納すると、保険料が割引されます。ただし表記は「年4%(複利現価法)」で、これは前納した期間に応じて利息相当分を差し引く計算方法です。「4%安くなる」という意味ではありません。実際の金額は協会けんぽ支部で確認してください。
前納できる区切りは4月分〜9月分または10月分〜翌年3月分(12か月なら4月分〜翌年3月分)です。年度の途中で任意継続になった人は、資格を取得した日の属する月の翌月分から9月分または3月分までとなります。資格取得日によっては翌月分からの前納ができないこともあるので、そこも確認が要ります。
また、保険料は原則2年間変わりません。前年の所得が高かった人は、翌年度に国保料が跳ね上がるリスクを避けられるという意味でも安定します。
なお、途中でやめることもできます。資格喪失の事由に「任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出たとき」が含まれているためです。国保のほうが安いと分かったら乗り換えられます。
出典:協会けんぽ「任意継続」/2026年9月11日確認
会社都合で辞めたなら、国保が大幅に安くなる
ここは知らないと確実に損をする部分です。
倒産や解雇などで職を失った人(非自発的失業者)は、国民健康保険料の計算で、前年の給与所得を100分の30とみなしてもらえます。
前年の給与が300万円だったなら、90万円として計算されるということです。国保料は前年の所得をもとに決まるので、軽減の幅は非常に大きくなります。
対象になるのは、雇用保険の特定受給資格者(倒産・解雇など)と特定理由離職者(契約更新されなかった場合など)です。自己都合退職は対象外です。
軽減が適用される期間は、離職日の翌日から翌年度末まで。判定は、雇用保険受給資格者証の「12.離職理由」欄(旧様式は「⑬離職年月日 理由」欄)に記載された離職理由コードで行われます。
この100分の30は、高額療養費の自己負担限度額を決める所得区分の判定にも使われます。医療費がかさんだときの上限額も下がるということです。
該当しそうなら、国保の窓口で必ず申し出てください。自動では適用されません。自分が特定受給資格者・特定理由離職者に当たるかどうかは、ハローワークが離職票をもとに判定します。離職理由に納得がいかない場合は、そこで相談できます。
どれくらい下がるのか。制度がつくられたときの厚生労働省の試算では、給与収入300万円の単身世帯で、国民健康保険料が年18.5万円から7.6万円になるとされていました(平成22年当時の保険料率での試算なので、現在の金額とは異なります。あくまで軽減の幅を示す目安として見てください)。
出典:厚生労働省「倒産などで職を失った失業者に対する国民健康保険料(税)の軽減措置」/2026年9月12日確認。制度創設時(平成22年)の報道発表資料。具体的な保険料額と手続きはお住まいの市区町村の窓口で確認してください
家族の扶養に入れるか
保険料の負担がゼロになるので、条件を満たすならこれが最も有利です。親や配偶者が会社の健康保険に入っているなら、まず検討してください。
主な収入要件は次のとおりです。
| 認定対象者 | 年間収入の上限 |
|---|---|
| 一般 | 130万円未満 |
| 19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く) | 150万円未満 |
| 60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者 | 180万円未満 |
19歳以上23歳未満の枠は、2025年10月1日以降の認定から150万円未満に緩和されています。令和7年度の税制改正で特定扶養控除が見直され、特定親族特別控除が創設されたことを踏まえた変更です。年齢は扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定されます。まだ130万円のままで案内している情報もあるので注意してください。
収入要件に加えて、次の条件もあります。
- 同居の場合:年間収入が上記の基準未満で、かつ被保険者の年間収入を上回らないこと
- 別居の場合:年間収入が上記の基準未満で、かつ被保険者からの仕送り額より少ないこと
そして、ここがいちばん重要です。
雇用保険の失業給付は「収入」に含まれます。雇用保険受給資格者証を提出する場合、基本手当日額が3,612円未満(60歳以上は5,000円未満)である必要があります。
これが何を意味するか、具体的な数字で見てみましょう。失業保険は20代でいくら?で計算した基本手当日額はこうでした。
| 月給 | 基本手当日額 | 扶養に入れるか |
|---|---|---|
| 18万円 | 4,683円 | 入れない |
| 20万円 | 5,036円 | 入れない |
| 25万円 | 5,775円 | 入れない |
つまり、失業保険を受け取りながら親の扶養に入ることは、ほぼできません。正社員として働いていた20代なら、まず基準を超えます。
現実的な使い方はこうなります。失業給付の受給が終わってから扶養に入る、あるいは待期・給付制限で支給を待っている間だけ扶養に入り、支給が始まったら抜ける。どちらも家族の勤務先を通した手続きが必要なので、先に相談しておいてください。
出典:協会けんぽ「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」/2026年9月12日確認
国民年金は「未納」ではなく「免除」にする
厚生年金に入っていた人が退職して、次の会社まで期間が空く場合、自分で国民年金第1号被保険者になる手続きが必要です(20歳以上60歳未満)。保険料は令和8年度で月17,920円。収入がない状態では重い金額です。
払えないとき、多くの人がそのまま放置します。これが最悪の選択です。
未納・全額免除・納付猶予の違いを見てください。
| 老齢基礎年金の受給資格期間 | 老齢基礎年金の年金額 | 障害・遺族基礎年金の受給資格期間 | |
|---|---|---|---|
| 納付 | あり | あり | あり |
| 全額免除 | あり | あり(満額の1/2) | あり |
| 納付猶予 | あり | なし | あり |
| 未納 | なし | なし | なし |
全額免除でも、老齢基礎年金は満額の2分の1を受け取れます。40年納付した場合が年847,300円なので、40年すべて全額免除でも年423,650円。国庫負担分が残るからです。未納だと、この2分の1も消えます。
そして本当に怖いのはここからです。
未納の期間があると、病気やけがで障害が残ったときに障害基礎年金を受け取れない場合があります。障害基礎年金は1級で年1,059,125円、2級で年847,300円。老後の話ではなく、明日事故に遭ったときの話です。
具体的には、次のいずれかに当てはまると支給されません。
- 初診日(または死亡日)の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間(免除期間を含む)が3分の2未満
- 初診日(または死亡日)の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納がある
免除を受けていれば、この判定で「納付済期間」と同じ扱いになります。未納はカウントされません。しかも事故が起きてからさかのぼって申請しても、納付要件には算入されません。
「あとで払えばいい」が通用しないのが、この制度です。
出典:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」/2026年9月12日確認
失業を理由にした免除の申し方
退職した人には、通常より通りやすい「特例免除」があります。
通常の免除審査は本人・配偶者・世帯主の前年所得を見ますが、失業・倒産・事業の廃止などの事実が確認できれば、失業した本人の前年所得にかかわらず免除・納付猶予を受けられます。退職した人の前年所得をゼロとして審査が行われます。
必要な書類は、これだけです。
- 「雇用保険被保険者離職票」のコピー
- 「雇用保険受給資格者証」「雇用保険受給資格通知」のコピー など
失業保険の手続きで手元にある書類が、そのまま使えます。
手続き先は、年金事務所、市区役所・町村役場の国民年金担当窓口、郵送、またはマイナポータルからの電子申請です。
時間の目安も押さえておいてください。国民年金の加入手続きから約2週間後に納付書が届きます。免除の申請からは約2か月後に審査結果が送られてきます。審査結果が届くまでの間に納付の案内が届くことがありますが、結果を待って構いません。
落とし穴が1つあります。全額免除や納付猶予は、翌年度以降も継続して審査してもらえる仕組みがあります。しかし失業等による特例免除で承認された人は、翌年度もあらためて申請が必要です。1年目で安心して忘れると、2年目が未納になります。
なお、免除された保険料は10年以内なら追納できます。収入が安定してから納めれば、年金額を満額に近づけられます。
出典:「【転職をご検討中の方へ】国民年金の加入、保険料免除・納付猶予制度のご案内」、「会社を退職したときの国民年金の手続き」/2026年9月12日確認
手続きチェックリスト
退職前
- 次の会社の入社日が決まっているか確認する(空白がなければ手続きは不要)
- 家族の健康保険に入れそうか、家族の勤務先に条件を聞いておく
- 退職日と、任意継続の20日の期限をカレンダーに入れる
退職後(すぐ)
- 健康保険3択のうちどれにするか決める(任意継続と国保は両方試算して比べる)
- 任意継続なら20日以内に協会けんぽ支部へ、国保なら14日以内に市区町村へ
- 国民年金第1号被保険者になる手続きをする
- 保険料を払えないなら、同時に免除・納付猶予を申請する(離職票のコピーを持参)
離職票が届いたら
- 会社都合・契約満了などに当たるなら、国保の窓口で軽減の申し出をする
- ハローワークで失業給付の手続きをする
翌年
- 失業特例で免除を受けた場合、翌年度もあらためて申請する
辞めてから探す予定なら、手続きの前に読んでおきたいことがあります。生活費の見通しは失業保険は20代でいくら?に、退職の段取り全体は退職の流れに、有給の使い方は有給消化と退職日の決め方にまとめています。
手続きが片づいたら、次は仕事探しです。空白期間は長引くほど説明が必要になるので、体調が戻ったら早めに動き出すことをおすすめします。
転職エージェントについてはハタラクティブの評判、マイナビジョブ20’sの評判、第二新卒エージェントneoの評判で解説しています。ブランクの書き方そのものは短い職歴・空白期間がある人の職務経歴書と履歴書の書き方にまとめました。
次の会社に入るときは、労働条件通知書の「その他」欄で社会保険と雇用保険の加入状況を必ず見てください。ここが「無」だと、また辞めるときに同じ手続きと同じ負担が発生します。内定後の労働条件通知書|どこを見るかにまとめています。
手続きに必要な書類をどこで受け取るかは退職時にもらう書類と返すものにまとめました。離職票が届く前でも、退職証明書なら請求すれば早く出ます。
まとめ
- 健康保険証が使えるのは退職日まで。翌日からは自分で加入先を決める
- 選択肢は任意継続・国民健康保険・家族の扶養の3つ。期限は20日以内/14日以内とバラバラ
- 任意継続は在職中の2倍。ただし標準報酬月額32万円が上限で、給与が高かった人ほど割安。1回滞納すると資格を失う
- 任意継続と国保のどちらが安いかは前年所得と自治体で逆転する。両方試算して比べる
- 会社都合など非自発的な離職なら、国保料は前年の給与所得を100分の30として計算される。自己都合は対象外
- 家族の扶養は保険料ゼロ。ただし失業給付は収入に含まれ、基本手当日額3,612円以上だと入れない
- 19歳以上23歳未満は、2025年10月1日以降の認定から年間収入150万円未満に緩和
- 国民年金は未納にしない。全額免除なら老齢基礎年金は満額の1/2が残り、障害基礎年金の要件も満たせる。未納は両方ゼロ
- 失業を理由にすれば、前年所得にかかわらず免除を申請できる。必要なのは離職票のコピー。ただし翌年度も申請が必要
- この記事では住民税を扱っていない。住民税は前年の所得にかかるため、辞めても請求が続く。辞めた月で一括徴収か納付書かが変わる仕組みは退職後の住民税にまとめている


