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「ことわったら、訴えられるんじゃないか」「今後の選考に響かないか」——そんな不安がよぎっていませんか。結論から言うと、内定は辞退できます。他社から先に内定が出た、条件が面接で聞いた話と違った——理由はさまざまですが、答えは変わりません。
この記事では、先に法律の答えを出したうえで、マナーや伝え方を、条文と厚生労働省の資料にもとづいて整理します。読み終わるころには、いつ・どう伝えるかが決められます。
内定を辞退できるのか(法律の答え)
できます。ただし「いつでも自由に、何の効果もなく」ではありません。
まず、内定は「もう契約が成立している」状態
厚生労働省は、採用内定をこう説明しています。
採用内定とは、「労働者と使用者との間で一定の始期及び採用内定通知書又は誓約書に記載されている採用内定取消事由が生じた場合は解約できるという解約権留保を付して労働契約を締結した状態」を指すことが多いものと考えられます。
出典:厚生労働省「スタートアップ労働条件」Q&A/2026年9月12日確認
かみくだくと、内定が出た時点で、働き始める日を先に定めた労働契約がもう成立しているということです。最高裁も、大日本印刷事件(昭和54年7月20日判決)でこの考え方を示しています。
だから、会社が内定を取り消すのは実質的に「解雇」として扱われます。それだけ内定は重いものです。
契約が成立しているなら、辞退は「解約」になる
裏を返せば、あなたが辞退するのは「成立している契約を解約する」ことです。
そして、期間の定めのない労働契約を労働者側から解約するときのルールが、民法にあります。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
出典:e-Gov法令検索「民法」 第六百二十七条第1項/2026年9月12日確認
ここで大事なのは、「各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」という部分です。会社の許可はいりません。申し入れれば、2週間後に契約は終わります。
つまり法律上は、入社日の2週間前までに辞退を申し入れれば、入社を回避できるという整理になります。
「損害賠償を請求される」は本当か
ここが一番知りたいところだと思います。厚生労働省の同じページには、こう書かれています。
内定の段階ですでに労働契約は成立していると認められる場合には、学生・労働者側からする一方的な破棄は契約違反になりかねず、事由によっては損害賠償責任が課される場合があります。しかし、労働者の意思に反して労働契約の履行を義務づけることはできないため、損害賠償責任に止まります。
ここから2つのことが分かります。
1つ目。辞退が一方的な破棄にあたる場合、理屈のうえでは損害賠償の責任を負う可能性がある。「絶対に何も起きない」ではありません。ネットで見かける「内定辞退に法的リスクはゼロ」という説明は、正確ではありません。
2つ目。それでも、あなたの意思に反して働かせることはできない。責任が生じるとしても「損害賠償責任に止まります」——つまり、その会社で働かされることは、法律上ありえません。
不安の中身が「無理やり入社させられるのでは」なら、その心配はいりません。
実際にはどうなのか
この記事では「損害賠償の実例はほとんどない」とは書きません。そういう統計が公表されていないからです。根拠のない安心も、根拠のない不安と同じくらい役に立ちません。
書けるのはここまでです。理屈のうえでは可能性があり、強制的に働かされることはない。そして、具体的な事案で賠償が認められるかどうかは、個別の事情によって判断されます。
すでに会社から金銭を請求されている、強い言葉で辞退を拒まれているといった状況であれば、一人で抱えずに法律の専門家に相談してください。費用が心配なら、法テラス(日本司法支援センター)で無料相談の案内を受けられます。
内定と「内々定」は違う
もうひとつ、混同されやすい区別があります。
内々定は、まだ労働契約が成立しているとは限りません。厚生労働省はこう書いています。
学生・労働者が内々定を辞退する場合には職業選択の自由(憲法22条1項)もあるために、原則として内々定の辞退が違法になるということは考えにくいところです。
憲法22条1項は、次のとおりです。
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
出典:e-Gov法令検索「日本国憲法」/2026年9月12日確認
ただし、内々定なら何をしてもいいという意味ではありません。同じページには、労働契約が成立していない場合でも「採用内定の『予約』とされることにより、内々定の取消や辞退が信義に反し、相手方の期待権を侵害するものとして損害賠償責任が認められることもあり得ます」とも書かれています。内定より緩やかというだけで、ゼロではありません。
どちらの段階なのかは、呼び方だけでは決まりません。厚生労働省も、拘束関係の度合いが強ければ内々定でも「採用内定」と判断されることがあると書いています。書面が出ているか、入社日が決まっているか、誓約書を出したかが目安になります。
とはいえ、やることは変わりません。どちらの段階でも、早く、はっきり伝えるのが最善です。
| 段階 | 労働契約は? | 辞退の位置づけ | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 選考の途中(面接前・結果待ち) | 成立していない | 契約の話ではない | 連絡のマナーの問題。日程が迫るほど迷惑が大きい |
| 内々定 | 成立しているとは限らない | 原則として違法とは考えにくい(職業選択の自由) | 拘束の度合いが強いと「内定」と判断されることがある。期待権の侵害として賠償責任が認められることもあり得る |
| 内定(通知書・誓約書あり) | 成立している | 契約の解約(民法627条1項) | 申し入れから2週間で終了。理屈のうえでは賠償の可能性 |
自分がどの段階にいるかで、話の重さが変わります。ただし、どの段階でも「早く伝える」が正解であることは変わりません。
ことわる前に、一度だけ確認したいこと
伝え方に進む前に、30秒だけ立ち止まってください。「ことわる」以外に手がないかを確かめるためです。
条件が理由なら、交渉の余地がある場合がある
給与や勤務地といった条件が引っかかっているだけなら、辞退の前に相談してみる価値があります。エージェント経由なら、条件交渉は担当者の仕事です。言いにくいことを代わりに伝えてもらえます。
もちろん通るとは限りませんし、交渉したから採用が取り消されるということもありません(内定の取り消しには解雇と同じ厳しい条件が必要です)。
「話が違う」なら、まず書面を確かめる
面接で聞いた話と入社後の条件が違う気がする——という理由なら、労働条件通知書を先に読み直してください。2024年4月から、勤務地や仕事内容が将来どこまで変わりうるか(変更の範囲)を明示することが義務づけられています。不安の正体が、書面を読むと解消することがあります。
見方は内定後に届く労働条件通知書にまとめています。
それでも合わないなら、ことわっていい
確かめたうえで「やはり違う」と思ったなら、それは十分な理由です。ここから先は伝え方の話に進みます。
いつ、どう伝えるか
2週間は「下限」であって、目標ではない
民法の2週間は、それより前に申し入れれば入社を回避できるという法律上の線です。「2週間前に言えば十分」という意味ではありません。
会社はあなたのために採用の枠を確保し、受け入れの準備を進めています。決めた瞬間に伝えるのが、一番迷惑が小さく、自分の気も楽になります。迷っている時間そのものが、双方にとって損失です。
電話が基本。つながらなければメール
電話とメールのどちらが失礼かについては、公的な決まりはありません。ただ、採用担当者に確実に伝わり、その場で確認のやり取りができるという実務的な理由から、まず電話をかけ、つながらなければメールを送るという順番が無難です。
メールだけで済ませる場合も、送りっぱなしにせず、返信がなければ電話で確認します。
理由は、詳しく言わなくていい
辞退の理由を細かく説明する義務はありません。「他社に決めました」「検討した結果、辞退させてください」で十分です。
嘘の理由を作らないでください。転職の世界は思っているより狭く、エージェント経由なら担当者にも共有されます。言いたくないことは、言わなければいいだけです。
電話の例
お世話になっております。◯月◯日に内定のご連絡をいただきました、山田太郎と申します。人事ご担当の◯◯様はいらっしゃいますでしょうか。
(担当者に代わってもらってから)
先日は内定のご連絡をいただき、ありがとうございました。大変申し訳ないのですが、検討した結果、今回は辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
お忙しいなかお時間をいただいたにもかかわらず、このようなお返事となり申し訳ございません。ありがとうございました。
メールの例
件名:内定辞退のご連絡/山田太郎
株式会社◯◯
人事部 ◯◯様
お世話になっております。山田太郎です。
先日は内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
大変恐縮ですが、検討した結果、今回は内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
貴重なお時間をいただいたにもかかわらず、このようなご連絡となりましたこと、深くお詫び申し上げます。
末筆ながら、貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。
山田太郎
電話:090-0000-0000
メール:sample@example.com
転職エージェント経由なら、担当者に相談する
エージェントを通して応募した場合は、まず担当者に連絡します。辞退の連絡を代わりに入れてくれることが多く、自分から企業へ電話しなくて済む場合もあります(対応は各社の運用によります)。
担当者に言いにくいと感じる必要はありません。辞退の連絡は、エージェントの業務のうちです。エージェントの使い方は転職エージェントは何社登録すべきでも触れています。
やってはいけないこと
連絡しないまま音信不通にする。一番やってはいけません。会社は入社日まで席を空けて待ちます。連絡さえすれば終わる話が、放置すると人事から実家へ電話が行くこともあります。
入社日の直前まで引っ張る。法律上の2週間を切ってからの辞退は、会社の準備を無駄にする度合いが大きくなります。決まっているなら早く伝えます。
嘘の理由を作る。前述のとおりです。詳しく言わない、で通ります。
強く引き止められて、そのまま流される。「もう少し考えて」と言われても、あなたの意思に反して働かせることはできません。答えが決まっているなら、繰り返し同じことを伝えて構いません。
選考の途中で辞退する場合は別
ここまでは「内定が出たあと」の話です。面接の途中や、選考の結果を待っている段階で辞退する場合は、まだ労働契約が成立していません。
この場合は法律の問題ではなく、単に連絡のマナーです。それでも、決めたら早く伝えるという原則は同じ。面接の前日や当日にキャンセルすると、面接官の予定を空けさせたぶんの迷惑がかかります。
面接そのものの流れは転職面接の流れとマナーにまとめています。
よくある質問
Q. 内定承諾書にサインしてしまいました。もう辞退できませんか。
A. 承諾書にサインしていても、辞退はできます。内定承諾書は労働契約が成立したことの確認であって、辞退できなくなる書類ではありません。民法627条1項の「各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」は、承諾書の有無で変わりません。ただし契約の解約であることに変わりはないので、早く伝えるという原則は同じです。
Q. 「損害賠償請求する」と言われました。
A. その場で認めたり、支払いを約束したりしないでください。厚生労働省の資料にあるとおり、責任が生じるとしても損害賠償に止まり、働かされることはありません。実際に賠償が認められるかは個別の事情によります。強い言葉で迫られている場合は、法テラスなどを通じて法律の専門家に相談してください。
Q. 入社日を過ぎてから「やっぱり辞めたい」となったら。
A. その時点では辞退ではなく退職です。同じ民法627条1項が適用され、申し入れから2週間で退職できます。伝え方は退職の切り出し方、手続きの流れは退職の流れで解説しています。
Q. 複数の会社から内定が出て、決められません。
A. 迷っている理由を書き出すのが先です。条件で迷っているなら内定後に届く労働条件通知書を並べて比較すると、感覚ではなく事実で選べます。どちらもことわる、という選択肢もあります。
まとめ
- 内定は、働き始める日を先に定めた労働契約がすでに成立している状態(厚生労働省・大日本印刷事件)
- だから辞退は「契約の解約」。民法627条1項により、申し入れの日から2週間で終了する。会社の許可はいらない
- 理屈のうえでは損害賠償の責任が生じる場合がある。ただし厚生労働省は「労働者の意思に反して労働契約の履行を義務づけることはできないため、損害賠償責任に止まります」と明記している=働かされることはない
- 内々定の辞退は、職業選択の自由(憲法22条1項)もあり、原則として違法になるとは考えにくい
- 2週間は法律上の下限であって、目標ではない。決めた瞬間に伝えるのが一番いい
- 理由は詳しく言わなくていい。嘘は作らない
- 強く迫られている、金銭を請求されているといった場合は、一人で抱えずに法律の専門家へ
ことわることは、逃げではありません。合わない会社に入って早期離職になるほうが、自分にとっても会社にとっても損失が大きいからです。転職活動全体の流れは転職活動の進め方で解説しています。
辞退したあとの選択肢を用意するなら、その前に対象条件を確かめてください。第二新卒エージェントneoの対象は19歳〜29歳で、第二新卒・高卒・中卒・既卒・フリーターを前提にしたサービスです。面談拠点は東京・大阪・名古屋・福岡の4か所です(出典:公式サイト/2026年9月7日確認)。ここに当てはまらないなら、次の応募先を一緒に探せる別のサービスを当たってください。
経歴に不安があって、断ったあとの動き出しを手伝ってほしいなら
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経歴に自信がなくても正社員を目指したい人向け。対象は19歳〜29歳の第二新卒・高卒・中卒・既卒・フリーターです。Webでの申し込み後にキャリアカウンセリングを受けられます。
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